この概念を一躍有名にしたのは、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)で教授を務めた文化人類学者、デヴィッド・グレーバー(David Graeber)だ。彼が提唱した理論は、多くの働く人々に雷に打たれたような衝撃を与えた。日本語訳として酒井隆史氏の精緻な翻訳で岩波書店から刊行された単行本『ブルシット・ジョブ クソどうでもいい仕事の理論』は、単なるビジネス・経済書の枠を超え、世界的なベストセラーとなった。
グレーバーは本書の中で、他人の監視のためだけに存在する「取り巻き」、無意味な書類を作成し続ける「書類作成人」、問題の根本解決を引き延ばす「絆創膏貼り」など、明確な5つの類型を提示した。本人が「無意味だ」と自覚しながらも、まるで存在価値があるかのように振る舞わなければならない心理的苦痛。これこそが、資本主義社会が抱える最大のパラドックスと言える。