日本における予言ブームの原点を語るうえで、作家の五島勉氏(1929–2026)の存在を外すことはできない。1973年に刊行された彼の著書は空前の大ベストセラーとなり、当時高度経済成長の影で公害問題や石油ショックに揺れていた日本社会に決定的な影響を与えた。
同書がベースとしたのが、ノストラダムスが1555年に初版を出版した詩集『百詩篇集』(Quatrains)である。4行詩の形式で書かれた抽象的な詩篇は、多義的な解釈を可能とする複雑な構造を持っていた。五島氏は独自のドラマチックな日本語訳と構成力でこれを紹介し、若者を中心に「1999年に世界が終わるのではないか」という漠然とした末世観を植え付けた。このムーブメントは単なるブームにとどまらず、アニメや漫画、ゲームなどのサブカルチャーにおける終末論的意匠の源流となったのである。