ひと言で言えば、アスペリティとはプレート同士が「くっついて離れない強固な引っかかり」だ。海側のプレートは年間に数センチメートルずつ陸側プレートの下へ沈み込んでいる。このとき、境界全体が一律に滑るわけではない。大部分のスローピッチな領域が緩やかに動く一方で、一部の強固な岩盤同士が力強く固着し、エネルギーを蓄積し続ける。これが限界を超えて一気に剥がれ落ちる現象こそが、いわゆるプレート境界地震の本質である。
現在、最も懸念されている南海トラフ周辺では、海底地殻変動観測網が絶え間なく監視を続けている。気象庁が解析・公開する最新の地殻変動予測データによれば、紀伊半島沖から四国沖にかけて複数の巨大な固着域が存在することが明確になっている。固着が強く「すべり遅れ」が蓄積しているエリアほど、発生時のエネルギー放出量は爆発的なものとなる。南海トラフ地震の想定震源域において、このアスペリティが連動して破断した場合、マグニチュード9級の超巨大地震と広域な大津波が列島を襲う。