配給会社や制作陣が意図しない形で広まった現象、それが「バーベンハイマー」だ。ハリウッド映画産業が長年の課題としていた劇場離れを打破し、映画館に観客を呼び戻した大ヒットの背景には、このネットミームの存在があったことは否定できない。
クリストファー・ノーラン監督が描く壮大な歴史巨編映画『オッペンハイマー』と、グレタ・ガーウィグ監督による現代的なフェミニズムや多様性を織り込んだエンタメ作。映画ファンたちは「ハシゴ鑑賞」を楽しむ文化をSNS上で自発的に生み出し、映画界全体を大いに活気づけた。
しかし、興行的成功の裏でマーケティングの境界線は著しく曖昧になった。対照的なトーンを持つ作品同士のコラボレーションがバズを呼ぶ中で、悲劇の象徴や歴史的痛みを伴うモチーフが、単なる「映える」SNS素材として軽視されてしまう危険性が露呈したのである。