著名な経営者、トップアスリート、あるいは芸術家の中に、諸行無常を座右の銘として公言する人が数多く存在します。なぜ、一見すると寂寥感を漂わせるこの言葉が、第一線で結果を出し続けるプロフェッショナルたちに選ばれるのでしょうか。
大手Q&Aサイト(知恵袋等)やSNS上の声を丹念にリサーチ・検証すると、現代人がこの言葉に惹かれる理由は大きく2つの側面に分かれています。
第一に、「苦境や失意の中にあるときの救い」としての機能です。SNS上では「理不尽なリストラや失恋に打ちひしがれていたが、諸行無常という言葉を思い出し『この最悪な苦痛も永遠には続かない、必ず状況は移り変わる』と確信できて立ち直れた」といった体験談が数多く投稿されています。絶望的な状況に置かれたとき、すべては流転するという法則は「希望の根拠」へと反転します。
第二に、「成功時における強烈な自戒(傲慢さの抑制)」としての機能です。起業家やクリエイターの手記などでは、「事業が軌道に乗って巨額の利益が出た瞬間こそ『諸行無常』を唱える。いまの好調は一時的な条件が重なっただけであり、胡座をかけば一瞬で衰退する」といったストイックな自己統制のツールとして用いられています。
つまり、人生のバイオリズムが絶頂にあるときはブレーキとなり、どん底にあるときはアクセルとなる。この両輪のバランスを保つ精神的アンカーとして機能するからこそ、諸行無常は時代を超えて座右の銘として選ばれ続けているのです。