幕末史の巨人・ジョン万次郎(中濱万次郎)が打ち立てた家系は、明治維新以降の日本近代化プロセスと深くリンクしている。彼が土佐藩から授かった「中濱」の家名を継いだ子供たちは、父から受け継いだ国際的視野と強靭な探究心を武器に、新しい日本の建設において中核的な役割を果たした。
長男の中濱東一郎は、明治期の医学界を牽引した伝説的な医師だ。東京市医師会の会長を務め、予防医学や医学教育の発展に生涯を捧げた。万次郎がアメリカで身につけた合理主義と科学的思考は、東一郎を通じて日本の西洋医学の基盤へと注ぎ込まれた。
注目すべきは、直系子孫の現在である。万次郎の直系5代目にあたる中濱博氏は、心臓血管外科医としての輝かしいキャリアを持ちながら、歴史家・作家としても精力的に活動してきた人物だ。中濱博氏は家系に伝わる膨大な一次資料の整理と解読を進め、祖先である万次郎の真の姿を世に問い続けている。単なる血の繋がりにとどまらず、旧薩摩藩や旧土佐藩の名家、さらには明治期の言論人・実業家の家系とも複雑に交差する中濱家のネットワークは、近代日本の知識人社会そのものを鮮やかに物語っている。