「我逢人」の歌詞を紐解く上で、最も象徴的なキラーフレーズとなるのがサビで繰り返される「人は人に傷ついて 人は人に癒されて」という一節です。
多くのポップスが出会いの素晴らしさや他者への感謝を一面的に歌い上げるなか、大森元貴の視線は極めて冷徹かつ写実的です。他者と交わることは、裏切りや誤解、価値観の相違によって心が引き裂かれるリスクを孕んでいます。しかし同時に、その傷を癒やすことができるのもまた、別の他者との出逢いや温もりでしかあり得ないという、人間関係の逃れられないパラドックスを提示しています。
心理学における「心理的バウンダリー(自他境界線)」の観点からも、この歌詞は極めて成熟した構造を持っています。楽曲の終盤で提示される「貴方は貴方でいればいい」というメッセージは、他者に同化したり自己を押し殺したりする「共依存」への明確なアンチテーゼです。痛みを引き受けながらも、自分と他人の境界線を保ち、互いの存在を尊重し合うことこそが真の「我逢人」であると、若き日の大森元貴は直感的に見抜いていました。