市区町村の窓口で交付申請書を手に取ると、本籍地や筆頭者の欄にはあらかじめ「省略」にチェックが入っているか、希望する場合のみ丸を付ける仕様になっています。これには明確な法制度上の根拠と、日本の社会史が関係しています。
そもそも住民票は住民基本台帳法に基づく帳票であり、日本国内における「現住所と世帯の居住関係」を公証するための書類です。対して本籍地や筆頭者は、戸籍法が管轄する「個人の血縁関係や親族的身分」を管理するための情報です。制度の目的が根本から異なるため、居住関係を証明する住民票において、本籍地の記載は本来不可欠な要素ではありません。
さらに決定的なのが、個人の尊厳を守るためのプライバシー保護政策です。昭和中期から後期にかけて、就職差別や身元調査に戸籍・本籍地の情報が悪用された深刻な社会問題を受け、自治体実務では「不必要な身元確認情報の開示を防ぐ」運用が徹底されてきました。住民票の本籍地が省略される理由は、行政が個人の出自や家系に関する機微な個人情報を過剰に流通させないための、厳格な防壁となっているからです。