夕方の大型報道番組『かんさい情報ネットten.』のメインキャスターを務めていた当時、清水健の日常は多忙を極めていた。取材現場を飛び回り、スタジオで刻一刻と変わる情勢を伝える。その姿は視聴者から絶大な信頼を集めていた。だが、カメラがオフになった足元で、彼の人生を揺るがす過酷な現実が進行していた。
最愛の妻・奈緒さんとの死別である。結婚からわずか数ヶ月で発覚した乳がんとの闘い。そして長男の誕生。喜びと絶望が同時に押し寄せる日々の中で、彼はニュースキャスターとしての責任を果たし続けた。しかし、番組の降板と読売テレビの退社を選んだ裏には、言葉に尽くしがたい葛藤があった。他人の悲劇や社会の不条理を報じるマイクを握りながら、自らの足元にある命の重みとどう向き合うべきか。テレビ局を去る決断は、逃避ではなく、残された息子を守り抜き、命の重みを直接社会に届けるという新たな覚悟の始まりだった。