一夫多妻と聞くと、歴史ドラマや宮廷劇に見られる「正妻(本妻)と側室の権力闘争」や「寵愛をめぐる足の引っ張り合い」を連想する読者も少なくありません。しかし、宇髄天元と3人の嫁の間に身分の序列は一切存在しません。
天元自身が嫁たちに対し「本妻」「第2夫人」といった格付けを設けておらず、全員を等しく愛し、等しく重んじています。それを示す決定的な証拠が、天元が妻たちに叩き込んだ有名な家訓です。
「お前ら三人、まず命。次に堅気の人たち、最後に俺だ」
――『鬼滅の刃』遊郭編における宇髄天元の訓誡
「忍は任務のために命を捨てて当然」「主君のために死ね」と育てられたくのいちたちにとって、この言葉は価値観を根底から覆す救済でした。天元は誰か1人を贔屓することなく、3人全員に「生き残ること」を絶対命令として課したのです。
また、嫁同士の関係性も嫉妬とは無縁の強固な「シスターフッド(女性同士の連帯)」で結ばれています。まきをが泣き喚く須磨の尻を叩き、須磨が甘え、それを雛鶴が柔らかな笑顔で見守る――この完成されたトライアングルは、互いをライバルではなく「生死を共にする戦友にして家族」と認めているからこそ成立しています。