早朝4時半。まだ暗闇が包む豊洲市場に、一際の鋭い視線を走らせる男がいた。海産物のきむらやを牽引する木村店主だ。巨大なマグロや水揚げされたばかりの鮮魚が並ぶ競り場で、彼は魚の身質、脂の乗り、表面のツヤを瞬時に見極めていく。数十年の経験に裏打ちされた目利き職人の感覚は、数値化できない熟練技の真骨頂と言える。
「どんなに流通技術が進歩しても、元となる魚の質が悪ければ意味がない」。木村店主は静かに語る。競り落とされた海産物は、市場内の作業場ですぐさま最適な下処理が施される。このスピード感と的確な処理こそが、家庭に届いた瞬間の「獲れたての旨味」を左右する決定打となる。