鉄道各社の駅窓口や改札で最もトラブルになりやすいのが、ドッグスリング(抱っこ紐)やペットカート(バギー)の取り扱いです。国土交通省の指導基準および各鉄道事業者の約款において、ペットを車内に持ち込む大前提は「動物の体の一部(頭や手足)がケースの外に出ていないこと」と規定されています。
布製のスリングバッグから犬が顔を出している状態は、メッシュカバーで覆われていない限り「完全密閉」とみなされず、駅構内への入場自体を断られます。「おとなしいから」「顔だけなら迷惑をかけない」という飼い主側の主観は通用しません。メッシュ素材であっても、破れやすい簡易ネットや顔の輪郭がそのまま押し出されるような柔軟すぎる素材は、駅員の現場判断で入場不可とされる事例が報告されています。
また、近年利用者が急増しているペットカートに関しても厳格な制約が存在します。鉄道各社では、ペットカートを組み立てたまま車内に持ち込む行為を原則として認めていません。乗車する際は、以下の条件を完全に満たす必要があります。
- コット(バッグ・キャリー部分)を取り外し、犬を完全に収納して密閉する。
- 取り外したコットが規定サイズ(JRの場合:3辺合計120cm以内・10kg以内)に収まっている。
- 残ったフレーム(車輪部分)はコンパクトに折りたたみ、一般の手荷物として自立・保持する。
一体型でコットが分離できないタイプのペットカートは、どれほど小型であっても手回り品サイズ制限(特に体積・高さ)を超過するため、電車内への持ち込みは不可能です。駅のホームや車内ではカートを押して歩くことはできず、飼い主は「片手で犬入りコットを持ち、もう片手で折りたたんだ重いフレームを支える」という過酷な運搬を強いられる点に留意しなければなりません。