辻村作品とは異なるアプローチで強い印象を残したのが、日本を代表する人形アニメーション作家・川本喜八郎による『人形劇 三国志』だ。1980年代前半に放映されたこの超大作は、中国の歴史絵巻を背景に、緻密かつ重厚な世界観を作り上げた。
川本喜八郎が手掛けた主役級の人形たちは、鋭い眼光と微細な感情変化を表現できるよう精巧に作られていた。戦場の冷徹な空気感や登場人物たちの凄惨な死の描写、さらには暗闇の中で静かにたたずむ英雄たちの顔立ちは、幼少期の視聴者に「本物の歴史の重圧」と「静かな恐怖」を感じさせるに十分であった。職人技が生み出す人形劇の枠組みを超えたリアリティは、大人の鑑賞にも堪えうる圧倒的な完成度を誇っていた。