司法の手が及ぶと見られた捜査過程で、事態は誰も予想しなかった方向へと舵を切る。フランスの捜査当局が佐川に実施した複数回に及ぶ精神鑑定の結果、精神科医たちは彼を「重度の精神病であり、事件当時は心神喪失状態にあった」と結論づけたのである。
この裁定を受け、ヴェルサイユ重罪裁判所は佐川に対して刑事責任を問えないと判断。1983年、裁判を開くことなく不起訴処分(公訴棄却)を言い渡した。刑務所ではなく、パリ郊外のアンリ・コラン精神病院への強制入院措置が取られた。この司法判断こそが、のちに続く前代未聞の法的歪みの始まりであった。