主演を務めた豊川悦司と鈴木保奈美の圧倒的なリアリティも、本作を語る上で欠かせない。静かな理解者であろうと努めながらも、次第に追い詰められていく夫役の豊川悦司が見せる眼差しは、観客の胸に鋭い痛みを残す。また、透明感溢れる存在感で知られた鈴木保奈美が、理性を失い狂気へと足を踏み入れていく妻役を体当たりで演じ切った演技は圧巻の一言だ。
二人が狭い室内で糸や縄に絡まり合うクライマックスは、邦画史に残るエロティシズムと切なさが交錯する美的な名シーンとなっている。過剰なセリフに頼らず、身体の動きや視線の交わし合いだけで極限の愛情を表現した彼らの芝居は、観る者の感情を強く揺さぶる。