日本列島の沿岸には、年間数百件ものクジラやイルカが打ち上げられる「ストランディング現象」が発生します。田島氏の日常は、いつ鳴るかわからない現場からの緊急連絡と隣り合わせです。連絡を受ければ即座に装備を整え、北は北海道から南は沖縄まで全国各地の海岸へ駆けつけます。
漂着現場での作業は、まさに時間と自然環境との壮絶な戦いです。巨大なクジラの死骸は時間の経過とともに体内にガスが溜まり、破裂のリスクが高まります。真夏の炎天下では凄まじい死臭が漂い、冬の荒波が打ち寄せる砂浜では冷たい風雨にさらされながら、重いメスやノコギリを振るい続けなければなりません。
過酷を極める現場へ向かわせる原動力は、「死体を無駄にせず、生きていた証を未来へ残す」という強い信念にあります。日本各地の「ストランディングネットワーク」と密に連携を取りながら、臓器の病理組織検査や骨格標本の収集を実施。彼らがなぜ命を落としたのか、海の中で何が起きているのかを突き止めるため、田島氏は泥と脂にまみれながら命の記録を刻み続けています。