「なぜアパレルの給料は上がらないのか」。この問いに対する答えは、単純な「儲かっていないから」ではない。むしろ、アパレル業界特有のビジネスモデルと評価制度の複雑さが絡み合っている。
第一の理由は、成果の測定が極めて難しいことだ。販売員が接客した商品が売れたとして、その成果が個人の貢献によるものか、立地や天候、トレンドによるものかを切り分けるのは困難である。結果として、評価は「店舗売上」というチーム単位になりがちで、個人の給与に直結しにくい。これが「頑張っても給料に反映されない」という不満の温床になっている。
第二に、中間マージンの存在が挙げられる。アパレルは企画・製造・卸・小売という多層構造を持ち、各段階でコストが積み上がる。特に卸売型のビジネスモデルでは、小売店の取り分が大きく、ブランド側の利益率が圧迫されやすい。利益率が低ければ、人件費に回せる原資も限られてしまう。
第三に、非正規雇用の比率が高い点だ。販売職はパート・アルバイトの割合が多く、正社員でも店舗運営を担うエリアマネージャーまで昇進しないと年収は大きく伸びない。2026年現在、アパレル業界の正社員比率は他業種と比べて依然として低く、これが平均年収を押し下げる一因となっている。
さらに、業界特有の「好きなことを仕事にしている」という価値観も無視できない。ファッションが好きで入社する人が多いため、給与よりもやりがいを優先する傾向があり、結果として労働条件の改善交渉が進みにくいという側面もある。これは個人の選択の問題であると同時に、業界全体の慣習として根深く残っている。