日本酒を酌み交わす際に使われる徳利には、先が少し細くなった「注ぎ口(尖った部分)」が存在する。一見するとそこから注ぐのが正解に思えるが、実は「注ぎ口から注ぐのはマナー違反」という説が近年SNSなどを中心に広まり、議論を呼んだ。
この説の背景には、茶人・千利休に由来する茶道の精神や、「縁を訪ねる」という語呂合わせから平らな縁から注ぐべきだとする独自の美学が存在する。一方で、日本酒造組合中央会の見解や伝統的な職人の視点では、注ぎ口は本来液体を注ぎやすく滑らかに流すために設計された形状であり、そこから注ぐこと自体がNGとされるわけではない。
徳利から猪口へと酒を注ぐ際は、注ぎ口の形状にとらわれ過ぎず、お互いに心地よい距離感を保つことが肝要だ。手元を安定させ、猪口の8分目まで静かに満たす所作こそが、日本酒の持つ優雅な文化を体現する。