旅系Webメディアや個人の旅行ブログで頻繁に「魔女の宅急便の舞台」として紹介されるのが、クロアチアの世界遺産都市ドゥブロヴニクです。城壁に囲まれた旧市街と紺碧のアドリア海、オレンジ色に輝く瓦屋根のパノラマは、キキがデッキブラシで空を舞うシーンの背景と酷似しています。
しかし、クロアチア ドゥブロヴニク 噂を丹念に検証すると、ジブリ側が公式に認めた記録は存在しません。ドゥブロヴニクやアドリア海沿岸は、むしろ後に制作された『紅の豚』の主要なビジュアルソースとして公式に言及されています。両作の海辺の街という共通項と、ドゥブロヴニクの圧倒的な美しさが観光情報の中で混同され、ネット上で定説のように定着してしまったのが実情です。
もう一つの有名なミステリーが、オーストラリア・タスマニア州ロスにある19世紀創業の老舗ベーカリータスマニア ロスベーカリー(Ross Bakery)です。この店舗は「グーチョキパン店 実在モデル」として長年メディアを賑わせてきました。半円形の薪窯や、キキが居候した部屋を彷彿とさせる屋根裏の客室が存在し、現地オーナーもジブリファンを歓迎しています。ただし、こちらもスタジオジブリの公式資料に取材地としての記録はなく、ファンの発見から世界へ広まった自然発生的な巡礼地です。公式の意図した造形ではないものの、作品世界を高い解像度で追体験できる空間として、現在もファンの温かな交流拠点となっています。