伊藤潤二の業績を象徴するのが、米コミック界の最高峰「アイズナー賞」における複数回の受賞だ。アジア圏の作家として同賞の主要部門を何度も制覇した功績は、日本の「漫画業界」全体にとっても歴史的な快挙と言える。恐怖という感情を通じて人間性の神髄を描き出す手腕が、世界最高峰の批評家たちを心服させたのだ。
映画監督のギレルモ・デル・トロをはじめ、海外のトップクリエイターたちが一目置くのは、彼の描く画面が持つ「静謐な美しさ」にある。単に驚かせたりグロテスクなものを見せたりするのではなく、洗練された構図と線画によって「見たくないのに目を離せない」というジレンマを作り出す。この視覚的カタルシスこそが、海外のコミックファンを魅了し続ける最大の理由だ。