パブロ・ラライン監督のビジョンを世界へ届ける原動力となったのが、斬新な作品を送り出し続ける独立系配給会社NEONのプロデュースワークだ。彼らは従来の歴史劇が陥りがちな重厚なトーンを避け、まるでサスペンス映画やホラー映画のような心理的緊張感を色彩によって演出することを選んだ。
歪んだレンズ越しにとらえられるシンメトリーな構図と、神経を逆撫でする色彩設計。それは観客に「ダイアナの視点」を直接体験させるための過激な試みだった。王室の歴史やスキャンダルを表面上になぞるのではなく、一人の女性が味わった恐怖と解放感を、色覚を通じて脳裏に焼き付ける手法は見事というほかない。