現役時代の代名詞となったのが「技のデパート」という異名だ。猫騙し、八艘飛び、居反り、三所攻め――技の引き出しをどれだけ増やせるかが、彼にとって生き残るための唯一の武器だった。平均体重が150キロを超える角界において、100キロを切る小柄な身体で真っ向勝負を挑むには、緻密な戦術の構築が不可欠だったのだ。
「大きい相手と同じことをしていては絶対に勝てない」という確信のもと、夜遅くまで相手の癖を研究し、数多の技を磨き上げた。土俵際で見せる起死回生の大技は、観客の歓声を頂点に達せさせ、土俵の概念そのものを塗り替えた。その裏には、怪我と隣り合わせの凄絶な鍛錬と、執念とも言える闘志が秘められていた。