世界を驚かせた決定の裏には、冷酷な採算性の壁が立ちはだかっていた。欧州の航空機大手エアバス (Airbus SE)が開発したエアバスA380 (Airbus A380)は、空の輸送量を飛躍的に高める夢の機体として脚光を浴びた。しかし、その製造コストと運航コストは莫大だった。4基の巨体エンジンを回し、500人以上の乗客を満載にして飛ばさなければ、航空会社にとっては搭乗率のわずかな低下がそのまま致命的な赤字へと直結する。
当時、最高経営責任者(CEO)を務めていたトム・エンダース (Tom Enders)氏は、巨額の赤字を垂れ流し続ける同プログラムに対し、極めて厳しい現実を突きつけられた。受発注のキャンセルが相次ぎ、最終的な生産維持の防波堤となっていた大口顧客からの注文縮小が決定打となったのだ。超大型旅客機 (Very Large Aircraft / VLA)というカテゴリ自体が、航空会社の収益構造に適合しなくなっていた事実を同社トップが認めた瞬間だった。