今後30年以内に高い確率で発生すると予測されている南海トラフ地震。この国家的大災害のリスクが叫ばれる中で、最も危険なのは「誰かが事前に予知してくれる」「予報が出たら逃げればいい」という思い込みである。
特定のカウントダウンを期待する災害予知幻想は、準備を後回しにする致命的な猶予を生み出してしまう。「当たるかもしれない予測」を探してSNSを彷徨っている時間に、家具の固定をし、備蓄を確保する方が、命を救う確率は圧倒的に高い。科学が提供できるのは、「明日起きるかもしれないし、10年後かもしれないが、確実にエネルギーは蓄積している」という長期的な確率評価までだ。
予知という「魔法の弾丸」に依存することをやめ、いつ来てもおかしくないという不確実性そのものを受け入れること。それこそが、巨大地震の脅威に晒された日本列島で生き抜くための不可欠なマインドセットと言える。