輪島大士と貴乃花の関係を語る上で欠かせないのが、貴乃花の父である初代貴ノ花との特別な絆です。日本大学で学生横綱に輝き、鳴り物入りで角界入りした輪島と、名門・二子山部屋の御曹司として十代から脚光を浴びた初代貴ノ花。二人はほぼ同時期に入幕を果たし、昭和の大相撲ブームを牽引しました。
土俵上では互いのプライドを懸けて激突し、数々の名勝負を繰り広げたライバル同士でしたが、一度まわしを外せば無二の親友でした。当時、角界では部屋の垣根を越えた私的な交際はタブー視される風潮もありましたが、二人はそうした古い慣習を軽々と飛び越え、夜の街へ繰り出しては相撲論や将来の夢を熱く語り合いました。
輪島が第55代横綱・北の湖敏満とともに「輪湖時代(りんこじだい)」と呼ばれる黄金期を築き上げ、大相撲史にその名を刻む横綱へと登り詰める傍らには、常に初代貴ノ花の存在がありました。互いを認め合い、リスペクトし合う二人の関係は、やがて花田家と輪島家という家族全体の温かな交流へと発展していったのです。