『朝が来る』が単なるフィクションにとどまらず、多くの人々の心を打つ理由は、日本の特別養子縁組を取り巻く現実を徹底的な取材に基づいて描いている点にあります。
作中に登場する民間養子縁組団体「ベビーバトン」(代表・浅見)には、実在する民間団体「Babyぽけっと(ベビーぽけっと)」などの現場の取り組みが色濃く反映されています。予期せぬ妊娠に悩む若年層の女性を保護し、安全な出産環境を整え、子どもを望む育て親へと命のバトンをつなぐ仕組みは、作中で極めてリアルに描写されています。
日本における特別養子縁組は、子どもの福祉を最優先とし、実親との法的な親子関係を終了させて育て親と実子同様の関係を結ぶ制度です。不妊治療の現実、若年層の性教育の不足、そして孤立出産といった現代社会が抱える影の部分に光を当て、制度の重要性を広く世に知らしめた功績は計り知れません。