参拝者から最も多く寄せられる疑問の一つが、「眠り猫を見に行くためには奥社参道の入口で別料金を払う必要があるのか?」「本地堂の鳴龍(なきりゅう)を聞くには追加料金を取られるのではないか?」という点です。結論から申し上げますと、眠り猫も鳴龍も、1,300円の通常拝観券の中に鑑賞料がすべて含まれており、追加料金は一切発生しません。
なぜこのような誤解が広まったのか。現場を観察するとその理由が浮き彫りになります。眠り猫が位置する「奥社参道(家康公の墓所へと続く石段)」の手前には改札スタッフが常駐しており、ここで拝観券の提示(検札)が求められます。この検札所を「追加の料金所」と勘違いした参拝者がSNSや掲示板で誤った体験談を発信してしまったことが、噂の発端となっています。また、本地堂の鳴龍も輪王寺の管轄下にありながら東照宮の境内に位置しているため、寺院独自の受付と誤認されやすい構造になっています。チケットは退場するまで手元から捨てずに保管しておけば、追加の出費なく名所をすべて鑑賞可能です。
また、過去に拝観料が1,000円から現在の1,300円へと改定された値上げの背景についても、単なる収益確保ではありません。東照宮では「平成の大修理」として陽明門の金箔押し直しや彩色復元、漆の塗り直しに数十億円規模の費用が投じられました。漆職人や彩色絵師といった伝統工芸技術者の後継者育成、木造文化財の防災・耐震設備の拡充、さらには増加する訪日外国人に対応するための多言語インフラ整備など、世界水準の文化遺産管理を維持するための「文化財保護の投資」として値上げが実施された経緯があります。