家庭の煮付けをプロ品質へ引き上げる決定的な分水嶺が、調理前の下処理です。ここを省いてしまうと、どんなに優れた黄金比のタレを用いても生臭さが残ります。不可欠となる工程が、古くから和食に伝わる「霜降り(湯霜)」の技術です。
赤魚の煮崩れ防止の霜降り手順は、決して難しくありません。まず赤魚の皮目に浅く「十」文字の飾り包丁を入れます。これにより加熱時の皮の収縮による身割れを防ぎ、身の内部への熱の通りを均一化できます。続いて、ザルに並べた赤魚の上に80℃〜85℃程度の熱湯を皮目からまんべんなく回しかけます。沸騰直後の熱湯をそのままかけると皮が破れてしまうため、ポットの湯に少し差し水をして温度を落ち着かせるのがコツです。
表面が白くなったら即座に冷水にとり、身を崩さないよう指の腹を使って、皮に残った細かなウロコや、骨まわりの赤黒い血合いの塊を優しく洗い流します。最後にキッチンペーパーで水分を完璧に拭き取ることで、赤魚の煮付け生臭さを消す下処理が完結します。
また、スーパーで安売りされている冷凍切り身を扱う場合、冷凍赤魚の煮付け方には特有の配慮が必要です。凍ったまま沸騰した煮汁に投入すると、鍋内の温度が急低下して煮汁が濁り、細胞破壊によって大量のドリップ(旨味と水分)が漏れ出してしまいます。理想的な方法は、調理の半日前に冷蔵庫へ移して緩慢解凍するか、3%濃度の塩水(水500mlに対して塩大さじ1弱)に浸して20分ほど置く「塩水解凍」です。半解凍の状態で水気を拭き取り、そこから上記の霜降りを行うことで、冷凍特有のパサつきを完全に防ぐことができます。