この2つの手法は、経済的な成り立ちや資金回収のメカニズムにおいても対極に位置する。
養殖漁業は明確な「民間のビジネス」だ。生簀の中にいる魚はすべて事業者の所有物であり、投じたエサ代や設備投資は売上によって回収される。しかし、リスクもダイレクトに事業者に跳ね返る。台風による生簀の破損、赤潮の発生による大量死、あるいは配合飼料の価格高騰は、即座に事業の存続を脅かす。
対照的に、栽培漁業は「公共的な資源管理」の色彩が強い。一度海に放流された魚には、当然ながら誰の所有権もつかない。放流した稚魚がどれだけ生き残り、地元の漁師に捕獲されるかは海のみぞ知る世界だ。そのため、栽培漁業の種苗生産(稚魚の育成)は主に自治体や公的な栽培漁業センターが主導し、税金や漁協の負担金によって賄われることが多い。育てるコストを公的に負担し、地域全体の漁獲量を底上げする取り組みと言える。