スポーツ界の用語だった一軍が、なぜ教室内の階層を指すようになったのか。その心理的リアリティを見事に切り取ったのが、直木賞作家・朝井リョウのデビュー作『桐島、部活やめるってよ』だ。運動部の花形選手や派手な女子グループを中心に形成されるカースト上位の空気を、作品は冷徹に描き出した。
学校という狭い共同体において、一軍に属することは生存戦略そのものになり得る。グループから外れる恐怖、空気を読むための異常な神経戦。教室の一軍とは、必ずしも幸せな存在ではなく、常に誰かを下に置くことでしか自尊心を保てない歪んだ均衡の上に成り立っている場合も少なくない。