なぜ、これほどまでに世界中が熱狂したのか。その核心にあるのは、監督グレタ・ガーウィグと、主演兼プロデューサーを務めたマーゴット・ロビーによる卓越した企みだ。彼女たちが目指したのは、完璧な美を誇るバービー人形の偶像崇拝ではなく、その完璧さゆえに生じる息苦しさと矛盾の解剖だった。
無菌室のような理想郷「バービーランド」から、不条理と矛盾に満ちた「現実世界」へと放り出される主人公。ガーウィグ監督の筆致は極めて軽快でありながら、現代社会が抱えるジェンダー規範の歪みを鋭くえぐる。映画界において長らく「女性向けコンテンツ」と矮小化されがちだったテーマを、誰もが楽しめる超一級のエンターテインメントへと昇華させた手腕は、まさに映画史の転換点と呼ぶにふさわしい。