現役時代の安美錦竜児といえば、土俵際での驚異的な粘りと、相手の力を利用した自在な攻め口で「技能賞」を6度も受賞した屈指の巧者だった。巨漢力士を相手にしても、鋭い立ち合いと絶妙な出し投げで幾度となく波乱を起こしてきた。
現在、その技術の宝庫が安治川部屋の弟子たちへ惜しみなく注入されている。親方が教えるのは、単なる手先のテクニックではない。重心の位置、足の指の使い方、相手の視線から動きを予測する直感力まで、極めて緻密な土俵のロジックだ。稽古場で親方自らがまわしを締め、若手に胸を出す姿には、かつてファンを熱狂させた「技のデパート」の面影が色濃く残っている。