マイマイガ(学名:Lymantria dispar)は、ドクガ科に属する大型の蛾です。日本全国の森林や公園、市街地に広く生息していますが、普段は天敵の存在によって個体数が一定水準に抑えられています。しかし、突如として約10年〜11年の周期で爆発的な個体数増加を引き起こす特異な生態を持っています。
この大発生が起きる構造的要因として、国立研究開発法人森林研究・整備機構などの研究資料によると、主に天敵と病原体のバランスが関係しています。通常期は鳥類、寄生蜂、クモ、そしてマイマイガ特有の病原体である「核多角体病ウイルス(NPV)」や昆虫疫病菌が個体数を抑制しています。ところが、気象条件の好転や天敵の減少が重なると、幼虫の生存率が一気に跳ね上がり、大量発生のトリガーが引かれます。
一度大発生が始まると、その勢いは約2〜3年間にわたってピークが持続します。その後、過密状態になった群れの中でウイルス感染が爆発的に広がり、個体群が急速に崩壊(クラッシュ)して元の低密度状態に戻るという生態系サイクルを繰り返しています。過去に北海道や東北、長野県、岐阜県などで観測された大発生の記録も、すべてこの約10年周期の波に沿って推移しています。
発生の年間スケジュールを把握しておくことは、効果的な防除計画を立てる上で欠かせません。マイマイガの年間ライフサイクルは以下の通りです。
【発生時期の年間タイムライン】
・4月〜6月(幼虫期・毛虫):卵から孵化した幼虫が樹木の葉を食害。糸を吐いて風に乗る「ブランコ毛虫」として拡散。
・7月〜8月(蛹・成虫期・羽化ピーク):蛹から羽化した成虫が街灯などの光に集まり交尾。夜間に激しく乱舞する。
・8月〜翌年3月(卵塊期・越冬):建物の外壁、電柱、樹木の幹などに茶褐色毛で覆われた卵塊を産み付け、そのまま越冬する。