発熱に直面した際、多くの患者が直面するのが「解熱剤を使うべきか否か」というジレンマです。臨床医が解説する風邪の熱を下げるべきかの理由は、体温の絶対値ではなく「患者の全身状態の消耗度」に基準が置かれます。
体温が1℃上がると基礎代謝率は約10〜13%上昇し、免疫細胞の遊走能や貪食能が活発化します。したがって、38度前半の熱があっても、水分が摂れており安静に横になれているのであれば、無理に薬で解熱させる必要はありません。ただし、高熱による激しい頭痛や関節痛で「一睡もできない」「水分すら喉を通らない」状態に陥っている場合は話が別です。消耗による免疫力低下のデメリットが発熱のメリットを上回るため、アセトアミノフェンなどの比較的マイルドな解熱鎮痛成分を用い、苦痛を緩和して睡眠環境を確保することが賢明な判断となります。
回復プロセスの主役となる風邪のときの睡眠時間については、最低でも8〜9時間以上の深い睡眠を確保することが生化学的な回復条件です。睡眠中、特にノンレム睡眠の深いステージでは成長ホルモンの分泌が促されるとともに、抗炎症作用を持つサイトカインが大量に産生されます。睡眠不足の状態が続くとナチュラルキラー(NK)細胞の活性が低下し、ウイルスに対抗する力が半減することが数多くの臨床データで実証されています。
並行して意識すべきは消化管への負荷軽減です。胃腸の消化活動は全身のエネルギーの約10〜15%を消費します。風邪におすすめの食べ物としては、消化器官に負担をかけない「かきたまうどん」「おかゆ」「すりおろしリンゴ」が王道です。同時に、免疫グロブリンの原料となるアミノ酸を含む鶏胸肉のスープや、白血球の働きを助ける亜鉛・ビタミンCを含む食材を、食欲に合わせて少しずつ補うのがベストな戦略です。