脳の性差にまつわる言説が社会に広く定着した背景には、1990年代末から2000年代初頭にかけての世界的メディア展開がある。なかでも、アラン&バーバラ・ピーズ夫妻による著書『話を聞かない男』や『愛を語らない女』は大ヒットを記録し、男女の対立を「脳の構造の違い」として捉える見解を大衆化させた。
日本国内でも、テレビの特集番組や『NHKスペシャル 脳科学シリーズ』などが脳の機能差をビジュアルで分かりやすく紹介したことで、この概念は急速に浸透していった。現在では、YouTubeの解説動画やNetflixで配信されるドキュメンタリーコンテンツなどを通じて、こうした説が形を変えながら絶えず再生産されている。エンターテインメントとしての分かりやすさが、人々の認知の枠組みを形作ってきた歴史は無視できない。