それにもかかわらず、なぜ懐疑論は消滅しないのか。社会心理学者たちの分析によれば、歪んだ言論の温床となっているのは「知識の不足」ではなく「承認欲求と所属感」だという。専門家や公的機関が提示するデータに対する反発は、既存の社会秩序に対する不満の裏返しでもあり、独自の解釈を共有するコミュニティ内で強い絆を生み出す。
自分たちだけが「隠された真実」を知っているという優越感は、心理的な安全基地として機能する。客観的な反証が提示されればされるほど、それを「隠蔽工作」と解釈する認知の歪み(バックファイア効果)が働き、強固な信念体系が構築されていく。デジタル社会における「現代の天動説」は、技術の進化が生み出した孤独と分断の副産物と言わざるを得ない。