原作者の吾峠呼世晴が緻密に織り上げたダーク・ファンタジーの世界では、敵である鬼たちにも逃れられぬ人間時代の悲劇と葛藤が存在する。猗窩座もまた、かつて狛治(はくじ)という名で生き、守るべき者をすべて失った悲しい過去を抱えていた。
この二重構造を持つキャラクターを演じることは、声優にとって極めて高度な技量が求められる。ただ恐ろしい声を発するだけでは、キャラクターの真価は伝わらない。声優・アニメーション産業におけるキャスティングのあり方としても、今回の石田の起用は大きな指標となった。アクションの派手さやキャラクターデザインだけでなく、感情のグラデーションをどれだけ深く掘り下げられるか。石田の演技は、アニメにおける「敵役の人間ドラマ」のクオリティを一段上のステージへと押し上げた。