現代ラグビーの緊迫感を演出する最大の要素が、テレビジョンマッチオフィシャル(TMO)の存在だ。肉眼では確認が不可能な密集の底、あるいはタッチライン際の空中戦において、グラウンディングの正否や直前の反則をマルチアングルの高解像度映像で精査するシステムである。
レフェリーが空中に四角い画面を描くジェスチャーを見せると、会場の巨大スクリーンにリプレイ映像が映し出される。ボールの底面と芝生の間にディフェンダーのスパイクや掌が挟まっていないか、ボールを持った選手の足がラインを踏んでいないか。フレーム単位のスローモーション映像を前に、スタジアム全体が固唾を呑んで判定を待つ時間は、現代スポーツ随一のサスペンスと言ってよい。
判定の迅速化とプレーの流動性を維持するため、レフェリーとTMOの交信プロトコルも常に最適化されている。判定の決定権はピッチ上のレフェリーにありつつも、明確な映像証拠(Clear and Obvious)がない限り判定は覆らない。グラウンドの審判団と映像オペレーターの緊密な連携が、誤審を防ぎつつ試合のダイナミズムを担保している。