山本美香氏の歩みを語る上で欠かせない存在が、ジャパンプレス代表であり、15年以上にわたり公私ともにパートナーであった佐藤和孝氏です。二人は法律上の婚姻関係には縛られない事実婚のパートナーであり、最も信頼し合う取材バディとして、数々の死線を共にくぐり抜けてきました。
危険な戦地において、佐藤氏が全体のリスク管理や大枠の情勢判断を担い、山本氏が持ち前の柔らかさと鋭い観察眼で現地の女性や家庭の内側へ入り込んで肉声を拾い上げる――この絶妙な補完関係こそが、ジャパンプレス独自の人道報道を可能にしていました。
愛するパートナーを目の前で奪われた佐藤氏は、深い喪失感を抱えながらも、山本氏が残した未公開映像や手記を整理し、彼女の遺志を社会へ伝える活動の先頭に立ち続けました。また、山梨で彼女を見守り続けた父・孝治氏をはじめとする家族も、「美香が命を懸けて見つめ、伝えたかったメッセージを風化させてはならない」と、深い悲しみを抱えながらもその姿勢を誇りに思い、語り継ぐ道を選びました。