昭和20年代から30年代にかけて、浅香光代が巻き起こしたブームは凄まじかった。当時、男社会だった大衆演劇界において、女性が刀を振り回す「女剣劇」は色物扱いされることも少なくなかつた。しかし、彼女は洗練された舞踊の基礎と、目にも留まらぬ鋭い殺陣で観客の度肝を抜いた。
膝上の着物の裾をひるがえし、太ももをのぞかせながら悪役をバッタバッタと切り倒す斬新な演出は、当時の男性ファンを熱狂させた。浅香光代劇団の公演が催される浅草の劇場前には連日長蛇の列ができ、木戸銭を払ってでもひと目見たいという人々で溢れかえった。単なる「お色気」にとどまらない本物の殺陣の技術こそが、彼女を女剣劇の頂点へと押し上げた最大の要因である。