1990年代半ば、岩井俊二監督の世界観の中で放たれた眩いばかりの光を、映画ファンなら忘れることはできない。当時16歳だった彼女が見せた一瞬の表情、無垢さと危うさが同居する眼差しは、日本映画史に深く刻まれた。『リリイ・シュシュのすべて』など、瑞々しくも痛切な記憶を残す作品群を経て、彼女は着実に「本物の女優」としての階段を上ってきた。
当時の熱狂を単なる過去の栄光へと追いやるのではなく、すべてを自らの血肉に変えて歩んできた歳月。キャリアを重ねるごとに削ぎ落とされていく無駄な力みは、今の彼女にしか出せない「引き算の美学」を奏でている。大声で叫ばずとも伝わる悲しみ、静かな微笑みの裏に潜む深い情念。言葉の余白で多くを語る術を、彼女は長年の現場で手に入れてきた。