西洋の探検家たちが未踏の地へ足を踏み入れた時代、密林の奥深くに存在した食人習俗は、恐怖と偏見のフィルターを通して世界へと語り継がれた。実在する人食い部族の未知なる実態とは、一体どのようなものだったのか。専門家の分析によれば、その背景には単なる食糧確保とは異なる、きわめて高度で過酷な精神世界が存在していたという。
たとえば、パプアニューギニアなどの熱帯雨林地帯において行われていたカニバリズムの多くは、死者の肉体を摂取することでその魂や力を受け継ぐ「儀礼的食人」であった。あるいは、集落に病魔や害をもたらしたとされる悪霊の存在を肉体ごと滅ぼすための禁断の裁判的処刑儀式でもあったのだ。このような過酷な儀式は、外部の人間にとっては理解しがたい蛮行に見えたが、彼らの社会においては共同体の調和を保つための不可欠な秩序であったことが、近年の文化人類学の再検証によって解明されつつある。