華やかに見える子役の世界ですが、その舞台裏には長年にわたり過酷な労働環境という構造的課題が存在していました。
象徴的な事例として記録されているのが、2017年(平成29年)にWOWOWのドラマ制作現場で起きた事案です。制作陣のスケジュール管理の破綻により、当時わずか6歳だった子役・稲垣来泉が深夜3時からの早朝撮影に駆り出され、リテイクを含めて14時間近くもの拘束と徹夜撮影を強いられたことが後に大きく報道・問題視されました。
児童福祉法や労働基準法において、満13歳未満の児童の深夜業(原則午後8時から午前5時まで)は厳格に制限されているものの、当時の芸能界では「表現の自由」や「制作の都合」を盾にグレーゾーンでの運用が常態化していた側面がありました。この事案を契機に、民放各局や制作プロダクションでは子役の稼働時間管理、現場への専任スタッフ(インティマシー・コーディネーターやチャイルド・マインダー)の配置など、コンプライアンス順守が急速に進むこととなりました。
なお、当事者であった稲垣来泉自身は、そうした過酷な経験を乗り越え、NHK連続テレビ小説『ちむどんどん』でのヒロイン幼少期役など着実に実績を重ね、2026年現在では実力と品格を兼ね備えた注目の若手女優として確かな評価を確立しています。子役を取り巻く現場環境の改善は、才能ある子どもたちが心身を壊さずに長期的なキャリアを築くための不可欠な土台となっています。