スカイツリーの影が落とす現代都市のすぐ目と鼻の先、墨田区向島の路地裏にその店はある。かつて花街として栄えたこのエリアには、今なお江戸や昭和の残り香が漂う。長年地域に根差し、東京都飲食業生活衛生同業組合の歩みとともに歴史を重ねてきた建物は、まさに生きている建築遺産だ。
急速に変化が進む飲食・ナイトライフ産業において、これほど劇的な趣を保ち続けている場所は極めて稀と言える。木製の重厚なカウンター、使い込まれた調度品、そして壁に刻まれた歳月の痕跡。訪れる客は単に酒を飲むだけでなく、空間そのものが持つ重厚なストーリーを全身で体感しているのだ。これぞまさに、本物の昭和レトロ酒場が放つ圧倒的な説得力だろう。