初夏を迎えるとSNS等で可愛らしい姿が拡散される長毛猫の「サマーカット(ライオンカット)」。一見すると涼しげで抜け毛対策にも思えますが、獣医学的な観点からは安易な施術に対して強い警告が発せられています。
猫の被毛は、直射日光(紫外線)から極薄の皮膚を保護し、空気の層を抱え込むことで外気温の上昇を遮断する「天然の断熱材」として機能しています。丸刈りに近いサマーカットを施してしまうと、以下の重大なリスクに晒されることになります。
- 体温調節の阻害:外気温の熱が直接皮膚に伝わり、かえって熱中症のリスクが跳ね上がる。
- 日光性皮膚炎と腫瘍リスク:紫外線を遮る毛がなくなることで、皮膚の赤み、炎症、扁平上皮癌などの発症リスクが増大。
- 毛質の不可逆な劣化:バリカンを入れた後、被毛が元の美しい質感に戻らず、ゴワゴワした粗毛になったり部分的な脱毛が残る「毛刈り後脱毛」が起きる。
現場の獣医師の間では、「排泄物が毛に付着しやすい臀部周囲(衛生カット・お尻周りの部分カット)」や「毛玉が原因で重度の皮膚炎を起こしている患部のみのトリミング」に留め、全身のバリカンカットは避けるべきという見解が標準となっています。室内のエアコン設定温度を24℃〜26℃、湿度50%前後に保つことこそが、最も安全で効果的な暑さ対策です。