このエピソードの根底にある推進力は、「平塚教授」という絶対悪への恐怖です。伊豆大学機械工学科において平塚教授は、落単率が異常に高く、学生の情け容赦を一切受け付けない鬼教官として君臨しています。彼の講義で単位を落とせば、即座に留年へと直結するデスゲームが幕を開けます。
工学部の定期試験において唯一の生命線となるのが「過去問」です。平塚教授の過去問を誰が持っているのか、解答の信頼性はどれほどなのか。伊織、耕平、そして機械工学科の悪友たち(野島、山本、藤原ら)は、互いに協力する素振りを見せながらも、少しでも自分が助かるために他者を蹴落とす足の引っ張り合いを展開します。
情報戦の末に明らかになる試験の真相は、読者の予想を裏切らない残酷な喜劇でした。過去問を手に入れたと確信して挑んだ試験本番、平塚教授が配った問題用紙は「過去問の傾向を完全に裏切る超難問のオンパレード」だったのです。
試験結果において、北原伊織たちは阿鼻叫喚の結末を迎えます。どれだけ裏切りや謀略を重ねようとも、平塚教授という理不尽なシステムの前では等しく無力であり、全員が悲惨な点数を叩き出しました。しかし、ギリギリのところで追試や再提出の蜘蛛の糸にすがりつく彼らの姿は、読者に爆笑とともに「大学のテストとはまさにこういうものだった」という奇妙な共感とノスタルジーを抱かせます。