医学界において、胎児性アルコール症候群(FAS: Fetal Alcohol Syndrome)特有の顔貌特徴は極めて重要な診断指標の一つと位置づけられています。米国疾病予防管理センター(CDC)や厚生労働省の研究班による知見では、主に以下の3つの特徴的なサインが中核を成しています。
第一に挙げられるのが「短眼瞼裂(たんがんけんれつ)」です。これは目の横幅が極端に狭く見える状態を指し、重篤なケースでは胎児性アルコール症候群と小眼球症の合併や、目頭の蒙古襞(もうこひだ)が過剰に発達して目が小さく見える傾向があります。両目の間隔が広く離れて見えることも臨床的な観察点です。
第二の特徴は「人中の平滑化」です。通常、鼻の直下から上唇の中央にかけては縦の窪み(人中)が存在しますが、FAS特有の顔貌ではこの溝が消失し、平らでつるりとした形状になります。この人中平滑化の原因は、妊娠初期(特に妊娠4週〜10週頃)にアルコールが神経堤細胞の移動や分化を阻害し、顔面中央部の骨・筋肉・結合組織の正常な融合が妨げられることに起因します。
第三の特徴が「極めて薄い上唇(赤唇縁の平坦化)」です。上唇の赤い部分(赤唇縁)が極端に細く、弓状の山(キューピッドボウ)が不明瞭になります。医療現場における胎児性アルコール顔貌の見分け方では、これらを主観で判断するのではなく、専用のリッカート尺度(写真を用いた4〜5段階の評価チャート)を用いて厳密に判定されます。