インターネット上の掲示板やSNSで時折見受けられる「アンガスステーキは固くて噛み切れない」という意見。この噂の背景には、品種そのものの欠陥ではなく、飼育法(肥育環境)と流通グレードの混同という構造的な問題が存在します。
牛肉の柔らかさを左右する最大の要因は、出荷前の飼料です。牧草のみを食べて育った「グラスフェッド(牧草肥育牛)」は、運動量が豊富で脂肪が極めて少ないため、肉質が引き締まり強い歯ごたえが生じます。これに対して、トウモロコシなどの穀物を一定期間与えられて育った「グレインフェッド(穀物肥育牛)」のアンガス種は、赤身の繊維が解けやすく非常に柔らかい仕上がりになります。一般に「固い」と不満を持たれるケースの多くは、牧草飼育由来の個体を強火で過剰に焼き固めてしまった事例に起因しています。
もう一つの重要な指標が、米国アンガス協会が厳格に定める「CAB認定(Certified Angus Beef)」の存在です。米国農務省(USDA)の格付け(プライム、チョイスなど)よりもさらに厳しい10項目の品質基準(高いサシの含有量、一定以上の肉厚、均一な月齢など)をクリアしたアンガス牛だけに与えられる認証であり、全米のアンガス牛の中でも合格率は約3割程度に制限されています。このCAB認定マークが付いたアンガスビーフを選べば、パサつきや不快な固さに遭遇するリスクは極めて低くなります。