1980年代のアイドル黄金期を語る上で欠かせないのが、中森明菜 松田聖子 比較論です。メディアは長年、二大トップアイドルとしてライバル関係を煽りましたが、ビジュアル戦略と表現構造においては完全に好対照を成していました。
松田聖子が「聖子ちゃんカット」に代表されるように、フリルやレース、ピンクを基調とした「全方位から愛される究極の王道ガーリー偶像」を完璧に演じきったのに対し、中森明菜は「内省的な翳り」「自立した女性の葛藤」をビジュアルに投影しました。
明菜のメイクは、太めの自然な眉と吸い込まれそうな大きな瞳を強調しつつ、リップにはあえてヌーディーな色味やダークトーンを配置することが多く、これが現代の韓国コスメやモード系メイクに通じる「アンニュイな色気」を生み出していました。彼女が見せた美しさは、男性目線の「守ってあげたい可愛さ」にとどまらず、同世代の女性たちが「自分自身の感情を重ね合わせられる憧れのミューズ」として機能したのです。