ここで整理しておくべき重要な視点は、「少女漫画っぽい=軟弱な作品」という短絡的な誤解です。
『鬼滅の刃』はむしろ、ジャンプ作品の中でも極めて過酷で容赦のないデスバウンド(死生観)を持っています。主要キャラクターであっても手足を失い、命を落とす凄惨な展開が連続します。この「過酷な現実」と「繊細な優しさ」の極端な同居こそが本作の真骨頂です。
漫画史を振り返れば、手塚治虫氏から連なる少年漫画の流れに、萩尾望都氏や竹宮惠子氏ら「花の24年組」が持ち込んだ内面性・実存的苦悩が合流した歴史があります。『幽☆遊☆白書』や『HUNTER×HUNTER』の冨樫義博氏、『るろうに剣心』の和月伸宏氏ら先達が切り拓いた「少年の肉体に宿る複雑な情緒」を、吾峠先生が令和の感性で極限まで純化させた結果が『鬼滅の刃』なのです。